対外借金がどこまで膨張すれば、ドルが信認を失うかは。他のいろいろな要因と総合的に判断されるものだけに、明確に答えられません。しかし純債務の増加で、金利負担が増大し雪ダルマ式に債務が増大する状態となれば、政府の調整力(Controlability)は失われます。そういう状態になれば、基軸通貨ドルの信認は大きく揺らぎ、世界の通貨システムの混乱を招くこともありうる訳です。ドルが基軸通貨であるため、貿易赤字が続いても、他国のように外貨準備の制約から、引締め政策を発動して赤字を改善しなければならないといった歯止めはありません。しかし今みてきたように、永久に歯止めがないのではありません。むしろ対外債務残高の調整力を失うような事態になったら、ドルの信認失墜が国際金融システムの混乱につながる重大な影響をもつ点を私達はよく理解しておく必要があります。この意味で、基軸通貨国アメリカは、ドルの信認を自己規制によって堅持していく重大な責任を負っているといえるのです。アメリカの貿易赤字はいぜん続き、91年以降、赤字幅がむしろ拡大しています。そして貿易赤字は財政赤字とも深い関連があります。この点、クリントン新大統領が、国際競争力の強化と財政赤字の削減を非常に重視しているのは、正しいスタンスです。
「井上商店」という屋号の個人事業者が株式会社を設立する場合を考えてみましょう。会社設立に際して、取引先や顧客に知れ渡っている「井上商店」を商号に使いたいと思っても、同一市区町村内に同じ事業内容で、「株式会社井上商店」「井上商店株式会社」といった会社があった場合には、商号が同一または類似するという理由で「株式会社井上商店」「井上商店株式会社」という商号は使えません。しかし、こうした類似商号の厳しい規制も大幅に緩和され、同一の住所地を本店とする同一商号のみが禁止されることになりました。つまり、先の例で言えば、本店が同一の住所地でなければ、「井上商店株式会社」「株式会社井上商店」という商号を問題なく使えるわけです。同一の本店所在地で、同一の商号というケースはほとんど考えられないので、事実上の規制撤廃と言えます。今後は個人事業の屋号をそのまま会社の商号に使うこともできるのです。この類似商号の規制緩和も会社設立のスピードアップに大きく貢献します。
原油や食料品の値上がりにともない、オレンジジュースやジャムも値上がりした。小麦や大豆、トウモロコシなどの穀物が値上がりするのは、投機マネーや新興国での需要増加、バイオ燃料の生産といった理由を考えれば納得できるだろう。だが、オレンジジュースやジャムまで値上がりするとなると、理解に苦しむ人も多いのではないだろうか。じつは、これもバイオ燃料製造ブームの影響によるものなのだ。原油価格の高騰や温暖化対策で、石油の代替エネルギーが求められている昨今、バイオエタノールが大きな注目を浴びていることはすでに述べた。バイオエタノールは、北アメリカではトウモロコシを発酵させ、バーボンと同じ製造方法でつくり、南アメリカではサトウキビを発酵させ、ラム酒と同じ製造方法でつくる。すなわち、バイオエタノールはアルコールの一種と考えてよい。このバイオエタノールをガソリンと混ぜて燃料にすれば、自動車を走らせることができる。もちろん、バイオエタノールもガソリン同様、燃やせば二酸化炭素が出る。だが、トウモロコシやサトウキビは、光合成で二酸化炭素を吸収して育つので、長期的に見れば大気中の二酸化炭素を増やすことがない。温暖化対策が世界的な課題とされている現在、バイオエタノールがその切り札になるのではないかとさえいわれている。とはいえ、このバイオエタノールも、いいことずくめというわけではなく、マイナス面も存在する。北アメリカでは、トウモロコシがバイオエタノール製造にまわされてしまうため、食糧や飼料の分が不足し、価格が上昇した。シカゴの商品取引所における値動きを見ると、この1年で約2倍超に跳ね上がっている。一昔前、トウモロコシの豊作貧乏に泣いたアメリカの農家は、いまはトウモロコシを「黄色いダイヤ」と呼んでいる。これは、つくればつくるほど儲かるからだ。また、もともと大豆をつくっていたアメリカの農家も、大豆をつくるよりトウモロコシをつくるほうがはるかに儲かるということで、次々にトウモロコシ生産に転作している。すると当然、大豆が不足し、価格が上昇する。いっぽう、南アメリカではサトウキビをバイオエタノールの原料としているため、サトウキビの価格が上昇し、オレンジ生産農家が次々にサトウキビ生産に転作していく。その結果、オレンジの生産量が減少し、オレンジジュースやジャムが値上がりしたのである。